近代以前のヨーロッパでは、美声の少年歌手のボーイソプラノを維持するために去勢していました。
去勢された歌手のことをカストラートといいます。
思春期前の少年を去勢すると、男性ホルモンの分泌が抑制されて、変声期を無くすことができるのだそうです。
つまり、声変わりする前の少年を去勢すると、声が低くなることを防げるのですね。
去勢しても体は成長を続けるので、体格的にはそのまま大きくなっていくそうです。
見た目がすっかり大人になっても、高いボーイソプラノをもった歌手が生まれるわけです。
天使の声をもつ少年といえば、ウィーン少年合唱団が有名ですが、ここの少年たちは声変わりをしたり、14歳を超えたりすると退団します。
カストラートは少年の美声をいつまでも残そうということで去勢手術をされ、誕生したわけですが、現在の感覚からすると、ちょっと受け入れがたいです。
カストラートの場合、少年ですから親が決断するのでしょう。
しかし、いくら声が美しいからといって、なぜこんなことをしたのでしょう?
それは、優れたオペラ歌手は非常に稼げたからです。
でも、実際は一流の歌手であり続けられるのは、ごく一部の人だったようです。
それじゃあ大半は、二流だわ、玉はないわ、おじさんになってもずっと高い声だわ、とても悲惨な状態が目に浮かびます。
自分で物事をきちんと判断できない年頃に、周囲の大人によって取り返しのつかないことをされるのは問題です。
やはり人道的によくないと廃止されました。
「去勢」とは文字通り、勢いが去るようで非常に穏やかな性質になるそうです。
歌とは関係ないですた、日本でも例えば「性犯罪を繰り返す人には去勢を!」っていう意見もあります。
しかし、現在そういうことは行われていません。
犯罪行為の背景にはいろんな事情もあるかもしれませんし、いくら悪いとしても簡単に去勢しろっていうのは違います。
被害の原因を、手っ取り早く刈り取るだけの対処療法では、人類は進化しません。
去勢手術は自ら望んだ人しか、やってはいけないことです。
社会の中で何かを強制的に奪ったりすることは許してはならないし、尊厳は守られなければならない。
ちなみにカストラートの歌声の録音が残っているみたいです。
美しい歌声にはちょっと興味がひかれます。